天野 浩 HIROSHI AMANO 食育・味覚 農業・林業・水産業 1975年水俣市生まれ。 1997年家業の無農薬・無化学栽培の茶農家として就農。 緑茶・紅茶・ウーロン茶など多様な茶づくりに取り組む。 2011年、東京に本店を置く老舗和菓子店「とらや」の 紅茶羊羹の原料茶葉として、自社工房の紅茶が採用される。 詳細情報 資格・所属 天の製茶園 代表取締役 出演 著作 その他 専門分野 環境 食の安全性 紅茶、お茶 農業 講演テーマ 実績 講演料 この先生について問い合わせ 前のページに戻る
天の製茶園 代表取締役 天野浩氏 「うちの茶畑は少し変わっているんですよ。お茶は様々な草たちと共生しています。自然の摂理の中で競い合い、自らを活かそうとして旨味が増し、薫り高くなっていきます」 熊本県水俣市でオーガニックな環境下でお茶を作る天野浩さんは、そこには「生態系がある」と言う。 天野さんの話の中には何度も「生態系」という言葉が出てくる。 畑がある水俣市はだれもがその名を知る地域だ。1950年代に発生した公害は、環境汚染の食物連鎖で起きた人類史上最初の病気である。工場排水に含まれた有機水銀が生物濃縮した魚介類を、汚染されていると知らずに食べた多くの方々が犠牲になった。身体によいと思って食べていたその食べ物こそが、自らをむしばみ、体内に宿った子供の身体をむしばんだ。1997年には水俣湾の安全宣言が出され、漁が再開しているが、ここに至るまでには、被害者の方はもちろん地域住民の方々にどれだけの苦労があったのか、想像することさえできない。 「この地に生まれ育てば、自然と化学物質を使わない生活や食とは何か?を考えるようになるんです」と天野さんは言う。だからこそ「安全な食を提供することには意義がある」と。 柔和で明るい口調で「今は安全なだけでなく、美味しさを追求しなければだめです。若い生産者は変わってきているんですよ」と話す言葉の背景はとても深い。近年良く聞かれる言葉だが、ずいぶんと重さが異なるように感じるのは気のせいではない。 「以前は当たり前だった畜産物の有機肥料も、残念ながら最近は、使いにくい傾向になってきています。」理由は家畜が食べている「餌」にある。現在、日本の畜産業界では餌を自給することができていない。そのため、多くを海外からの輸入穀物などに頼っている。その餌を食べた家畜の排泄物には種が残ってしまうことがあり、堆肥として畑に取り入れると、見たこともない草が生えてくる場合があるという。また本来草食動物である牛に穀物を食べさせるため内臓には負荷がかかり、決して健康優良児の堆肥というわけでもない。 食物連鎖を考えたとき「昔は、畜産家と連携して畑をやっていましたが、今は難しくなってきているんです」と話す。 あなたはこの天野さんの話を聞いて何を感じるだろうか? 私たちの食べているモノは本当に安全なのか? 消費者には選択をする権利がある。あなたはきちんと情報を得て自らの意志で選んで買い物をしていますか? 毎日そんな事はできない…というのもまた事実。でも時々そのことを思い出し、心掛けることで社会は一歩前進していく。社会を変えていくのはあなたが選んだその食べ物なのだから。 インタビュアーから 天野さんはとてもおだやかな方で、いつも笑顔に溢れています。 講演会では、優しく穏やかに、かつ丁寧に「食の安全性」と「消費者選択」のための考え方や気づきを語りかけてくれます。 緑茶のみならず、紅茶、ウーロン茶なども作られる天の製茶園。美味しいお茶をいただきながら、今の食生活について考え直すきっかけの時間としていただけば幸いです。